2008年10月29日水曜日

決算整理の新しいイメージ

 桜井久勝著「財務会計講義 第9版」の37ページには決算整理について面白い著述がなされている。だいたい一般的な書籍では、仕入勘定の勘定残高だけでは意味をなさないので決算整理仕訳によって売上原価の数値に修正するなどといった著述になるのだが、各勘定科目の勘定残高が経済的事実と一致しているかどうかを点検するとともに、経済的事実と一致しない場合に調整が必要になるという流れで決算整理仕訳を説明している。経済的事実というキーワードがまた慎重な学者らしい姿勢を見る(経済的実態という言葉を使わずに経済的事実というキーワードが両者を厳密に区分していることを示している)。
 決算整理が必要な主たる原因は「1期間中の取引に関する記録」は、現金の収支や財貨の受け渡しなどのように」「物理的に知覚できる現象」に着目して記録されている点にあるとするくだりも見事だ。物理的に知覚が困難な、たとえば見越しや繰り延べといった取引は、会計期間中には記録されないことが多いので、その調整のために決算整理が必要になるという論理である。
 具体例としては減価償却費と借入金の利息の処理が38ページにあげられているが、経済的事実との調整という身近なキーワードで説明可能な点も、読んでいて決算整理のイメージを膨らましてくれる。

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