2008年2月8日金曜日

第117回日本商工会議所簿記検定3級

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(1)「決算にあたり」という文言を読み落とすと、現金過不足勘定で処理することになってしまうので問題文の読み込みがかなり重要な仕訳問題。こうした日本語の読解能力や注意力なども本試験では重要ということだろう。また、「従業員が本来負担すべき」費用を個人商店が負担した場合にはどの勘定科目で処理すべきか…という難しい問題を含む。事業主が資本金を引き出したわけではないので事実上の「立て替え払い」ということで「従業員立替金」勘定で処理するという非常に難しい問題だ。

(2)仕入代金の支払いに際して為替手形を振り出すケース。3級の場合には買掛金の決済のために為替手形を振り出すケースとこの仕入代金の支払いのために為替手形を振り出すケースがおそらく限界ではなかろうか。ただし2級になると「貨物代表証券を取得して為替手形を振り出した…」というような変形問題も考えられる。もともと指図証券という本質からすれば2級の未着品売買で為替手形が振り出されても良い。この場合には「(借)未着品×××(貸)売掛金×××」という仕訳処理になるだろう。複式簿記で為替手形が相殺すべき債権とは事実上「売掛金」に限定せざるをえないというのが、為替手形の「複雑さ」をある意味逆に反映している。

(3)償却債権取立益の問題だが貸し倒れた全額ではなくて一部のみが回収できたケース。実務上はこちらのパターンのほうが多いだろうし、良問というべきだろう。

(4)「給料」の仕組みを理解していないと仕訳処理のパターンだけでは解けないあたりが良問だ。実際に「給料天引き」を経験している社会人にはすぐわかる仕掛けだが…。

(5)引出金の問題だが、個人商店に対する所得税(事業主課税)をお店の現金で支払った場合についてまで学習の準備ができていたかどうかがポイントになるだろう。

2

 10月中の取引から当座預金勘定と当座借越勘定に記入する問題で、当座預金出納帳のような借方残高なのか貸方残高なのかをはっきりさせる下書用紙を書いておけばさほど難しくはない。なお二勘定制度の問題だが最終的な残高は一勘定制度と当然一致するので略式の当座勘定で当座預金勘定の月末残高の検証をすることもできる。

3

 平成1991日の残高試算表と平成199月中の取引から平成19930日の残高試算表の作成をする問題。条件文の与え方がやや変わっていて現金勘定や当座預金勘定の記入状況から取引を推定するもの。難しいものではないが、有価証券売却益がぽんと解答用紙に記載されていたり、支払利息の残高がさりげなく増加しているあたりがポイントか。ただし解答用紙や諸口などの条件を多少見過ごしても十分解答できるレベルの問題だ。

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 売上原価対立法ともよばれる決算整理・決算振替仕訳の出題。これまでにも第5問などで売上原価勘定で売上原価を算定する方式は出題されていたが、ここまで念入りに4つの小問で問いかける問題は珍しい。ただし決算整理仕訳が慣れている人にとってはもう2~3分で解答可能だが、よく専門学校などで教えている「しいくりくりしい」といった暗記で決算整理をしている場合には、まったく出来ない受験生も出てくるという天国と地獄の境目が見えやすい問題かもしれない。

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 精算表の空欄推定問題だが、貸借差額で数値を算定しなければならない箇所もあり、部分点で8割狙うというのが妥当な戦略か。ただ精算表作成には非常に強いタイプの受験生にはおそらく逆に100パーセント解答をめざすのも難しい作業ではない。未処理事項が4つあり、見越しと繰延の勘定科目を貸借で判断することさえ間違わなければ、だいたいのところは過去問題の範囲内ともいえる。

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