2008年8月9日土曜日

個別原価計算の意義

 日本商工会議所簿記検定で出題される個別原価計算は、原価計算表をいかに適正に作成するかに最終的には尽きる。データの集計能力はもちろんだが、費用別原価計算の段階でややこしい資料が与えられるという形が一般的で、本来あるべき個別原価計算の意義からすれば、データの読解と集計が最終的な問題解決ということになるわけだが、原価計算基準の31に個別原価計算の意義が定義されており、基本的にはその枠内での出題が多いのではないか。直接材料費や直接労務費は実際価格もしくは予定価格で、直接経費については原価計算基準32でわざわざ「原則として当該指図書に関する実際発生額をもって計算する」と断り書きがしてある。特許権使用料や外注加工賃などは確かにもう請求額のとおり原価計算表に記入すればよい。もっとも例外的に直接経費でも予定価格が使用されるケースはとうぜんありうるではあろうが…。
 個別原価計算の特質はむしろ問題を解くことよりも問題を分析することでより明らかになると考えられる。原価計算基準33は「間接費の配賦」について述べているが、個別原価計算は部門別原価計算を前提としておこなうべきとの著述がある(部門別原価計算については別途原価計算基準16で定義)。さらに単位原価の変動を避けるため〔製造間接費には固定費が含まれているので操業度によって単位原価が変動する)、予定配賦が原則とされている。個別原価計算を実務的に簡便化したと考えられる組別総合原価計算などでは特に予定配賦については言及されていないが、個別原価計算と同じ理由で予定配賦が原則と類推解釈できるであろう。そして「部門間接費の予定配賦率は一定期間における各部門の間接費予定額または固定製造間接費予定額および変動間接費予定額を、それぞれ同期間における当該部門の予定配賦基準をもって除して算定」と述べられており、予定配賦率は変動費と固定費を一括して計算しても変動費と固定費に分けて配賦率を計算しても原価計算基準では許容されていると読み取れる。製品原価の正確な計算を主目的にするならば無理に変動費と固定費に分解する必要性もなく、一括して予定配賦率を算定する方法もありうるということなのだろう。ただし原価管理をもう一つの目的として考えるならば、やはり固定費と変動費の区分配賦が望ましいと考えられる。

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