2008年8月11日月曜日

副産物

 原価計算基準28で副産物の処理などについて規定されている。個別原価計算にて副産物が発生する可能性は極めて低く、やはり継続指図書にて製造する総合原価計算に多い副産物という位置づけになるだろう。仕損品のように「失敗した製品」ではなく、かといって経営目的にかなう主産物でもないという副産物。「天麩羅」を作ろうとして必然的に発生する「天かす」のようなものと考えるのが妥当だろう。原価計算基準でも「副産物とは、主産物の製造過程から必然的に派生する物品」という定義をしている。原則的な処理は「主産物の総合原価から控除」だが、「(副産物を)売却して得た収入を原価計算外の収益とする」例外的な処理方法も認められている。作業くずや仕損品などの処理も基本的にはこの原価計算基準28の規定が準用されるので、実はこの副産物に関する原価計算基準28の意義は結構重たい。ただし実際に計算問題などで出題される場合に、副産物の発生が期末仕掛品の進捗度のさらに後の工程の場合には、原価計算基準の規定どおり総合原価から控除するべきだが、もし期末仕掛品よりも前の工程で副産物が発生した場合には、当月製造費用から副産物の評価額を控除するのが妥当ということになるだろう。
 総合原価計算の応用問題として、副産物をからめると、たとえば組別総合原価計算や等級別総合原価計算などと副産物、連産品と副産物(この組み合わせはよく見る)などが考えられる。実務的な重要性はあまり高くないと思われるが、受験簿記としてみると非常に美味しい論点なのかもしれない。原価計算基準では「発生」ではなく「派生」という言葉を使用しているが、これはこれでかなり深い内容を含むと考えられる。ただし深入りするよりも計算問題を解くほうが重要だろう。

2008年8月10日日曜日

消耗品と工場消耗品と工場消耗器具備品

 消耗品は商業簿記で使用される勘定科目で、だいたい切手や用紙代など日常感覚で用いる消耗品とそれほど意味は変わらないだろう。工場消耗品は、「工場」という言葉が単語の前についているので製造目的で消費される消耗品であることが明示されている。間接材料費のうちでも材料管理の重要性が乏しい材料、たとえば「原価計算」(国元書房)では、「機械油、グリス、電球、石鹸」といったものが具体例として挙げられている。たまに工業簿記で「燃料勘定」が使用されているケースがあるが、この場合には、石油や石炭などを一定程度使用する工場で、工場消耗品勘定で処理するのが妥当ではないと思われるケースで、工場消耗品とは区分して燃料勘定を使用するものと考えられる。いずにしても工場消耗品も燃料も継続記録法ではなく金額的に重要ではない間接材料であって、帳簿などでしっかり管理する必要がある金額的重要性のある間接材料費については、材料管理という観点でしっかり補助材料費として記録・管理するのが妥当だろう。
 そして工場消耗器具備品。10万円以下の固定資産(商業簿記でいえば備品)が該当し、となると「備品」という用語を使うのが妥当ではないような気もするが、「器具」であることには間違いない…ということでスパナや検査器具などが該当する。この場合には固定資産ではなくやはり間接材料費ということになるのが通例のようだが、「備品」という言葉よりも「器具」という言葉に重点が置かれた勘定科目と考えるのがよさそうだ。ただ消耗品であることには変わりがないので、工場消耗品と工場消耗品器具備品を明確に区分する必要性があるのかどうかは疑問だ。もし両方の勘定が使用されていた場合にはなんらかの工場もしくは会社の内部規定で使い分けが明確になされていると考えるのが妥当なのだろう。

原価の部門別原価計算

 原価計算基準に著述されている目的のうち、大別してしまうと「財務会計」と「管理会計」というわけ方もできる。部門別原価計算の場合、「財務会計」的な目的のために「製品原価の正確な計算」、「管理会計」的な目的のために「原価管理」といった考え方もできるだろう。原価計算基準では基準15にて原価の部門別計算の意義が述べられており、基準16に「原価部門の設定」としてその内容が詳述される。「原価部門とは、原価の発生を機能別、責任区分別に管理するとともに製品原価の計算を正確にするために、原価要素を分類集計する計算組織上の区分をいい、これを諸製造部門と諸補助部門とに分ける」(16)。機能別・責任区分別ということは、たいていの場合、作業区分とほぼ一致する形になるだろう。責任区分別に原価部門を設定し、原価部門ごとに原価管理をおこなう。通常の受験簿記では、修繕部門や組立部門といったように機能的・責任的な区分が行われて予算設定も原価部門ごとに行われているが、この原価部門のおこなう原価管理で予算差異が発生した場合には「組立部部長」などの管理責任が問われることになる。おそらく実際にはこの管理会計的な目的、つまり原価管理のほうが重要で、部門別原価計算を実施したからといって製品原価の正確な計算ができるとは限らない。活動基準原価計算のように「活動を重視」した原価管理というのもあるが、おそらく製品原価の正確な計算のためにも部門別原価計算は実際には副次的な目的ということになるだろう。

2008年8月9日土曜日

個別原価計算の意義

 日本商工会議所簿記検定で出題される個別原価計算は、原価計算表をいかに適正に作成するかに最終的には尽きる。データの集計能力はもちろんだが、費用別原価計算の段階でややこしい資料が与えられるという形が一般的で、本来あるべき個別原価計算の意義からすれば、データの読解と集計が最終的な問題解決ということになるわけだが、原価計算基準の31に個別原価計算の意義が定義されており、基本的にはその枠内での出題が多いのではないか。直接材料費や直接労務費は実際価格もしくは予定価格で、直接経費については原価計算基準32でわざわざ「原則として当該指図書に関する実際発生額をもって計算する」と断り書きがしてある。特許権使用料や外注加工賃などは確かにもう請求額のとおり原価計算表に記入すればよい。もっとも例外的に直接経費でも予定価格が使用されるケースはとうぜんありうるではあろうが…。
 個別原価計算の特質はむしろ問題を解くことよりも問題を分析することでより明らかになると考えられる。原価計算基準33は「間接費の配賦」について述べているが、個別原価計算は部門別原価計算を前提としておこなうべきとの著述がある(部門別原価計算については別途原価計算基準16で定義)。さらに単位原価の変動を避けるため〔製造間接費には固定費が含まれているので操業度によって単位原価が変動する)、予定配賦が原則とされている。個別原価計算を実務的に簡便化したと考えられる組別総合原価計算などでは特に予定配賦については言及されていないが、個別原価計算と同じ理由で予定配賦が原則と類推解釈できるであろう。そして「部門間接費の予定配賦率は一定期間における各部門の間接費予定額または固定製造間接費予定額および変動間接費予定額を、それぞれ同期間における当該部門の予定配賦基準をもって除して算定」と述べられており、予定配賦率は変動費と固定費を一括して計算しても変動費と固定費に分けて配賦率を計算しても原価計算基準では許容されていると読み取れる。製品原価の正確な計算を主目的にするならば無理に変動費と固定費に分解する必要性もなく、一括して予定配賦率を算定する方法もありうるということなのだろう。ただし原価管理をもう一つの目的として考えるならば、やはり固定費と変動費の区分配賦が望ましいと考えられる。

2008年8月8日金曜日

作業くず

 例として「個別原価計算を採用しているA製造会社において製造指図書♯201と製造指図書401を製造しているプロセスで作業くずが発生し、これを30,000円と評価した。ただし、この作業くずは製造指図書別に発生額を区別することができなかった」という問題を考えてみる。
 この場合、原価計算基準36の規定から考えていくことになるが、この原価計算基準36の規定そのものへの批判も多く、実は正解にたどり着くのは結構大変だ。実際には仕訳を丸暗記しているケースが多いのかもしれないが、ここは厳密に考えてみることにする。原価計算基準36で3は「個別原価計算において、作業くずは、これを総合原価計算の場合に準じて評価し、その発生部門の部門費から控除する。ただし必要ある場合には、これを当該製造指図書の直接材料費又は製造原価から控除することができる」という規定になっている。この原価計算基準36への批判というのは、処理が煩雑だからといっていきなり発生部門の部門費から控除するのではなく、発生原因とその負担を明確にした上でそれでも判別できないケースで、火発生部門費から控除すべきで原則と例外が逆ではないか…といったものだ。だがこの原価計算基準の規定でもこの例題は解けない。
 一つにはまず問題文からこの製造会社が部門別個別原価計算を採用しているのか単純個別原価計算を採用しているのかがわからないということだ。ただ単に「個別原価計算」と条件を設定しているだけで、他には何も条件設定がない。ただし同時に2つの種類の製品を製造していることは判明している。したがって、原則的な処理方法であれば仕訳処理は以下のようになるはずだ。
(借)作業くず 30,000 (貸)第一製造部門費 30,000
 部門別の内容がわからない以上はこれは仕訳処理としては妥当ではないだろう。では、製造指図書の直接材料費や製造原価から控除できるかというとこれもできない。問題文の条件にこの2つの製品の区別がつかないとあるのでつまり発生原因が判明していないからこの原価計算基準の例外規定も採用できない。となると実は最後は原価計算基準には規定はないが、作業くずの発生が材料や機械装置の使用上の誤りなどの工場全体で負担すべきと考えられる場合に該当するので発生した部門もわからないということで製造間接費から控除するという方法を採用せざるをえない。つまり以下の仕訳処理となる。
(借)作業くず 30,000 (貸)製造間接費 30,000


 あんまりいい問題とはいえないと個人的には思うが、作業くずには軽微な場合に、(借)現金 30,000 (貸)雑益 30,000 などとして実際に売却してしまった場合、コストベネフィットの観点で雑益処理してしまう方法もある。ただしこれは重要性の原則などで正当化できないこともないが、製造間接費から控除するときには原因は工場全体が負うという意思表示となるため、結局は、あんまり意味のない仕訳処理があるいは面倒だったのかのいずれかが理由ということになる。実際には作業くずが発生する製造部門というと「切削部門」などが暗黙の前提になっていると思うがそれすら特定できない場面での仕訳処理というのは、けっしてやさしい仕訳でもないし、論理的な仕訳処理とも思えない。原価計算基準がいかに古びているとはいっても、問題点をある程度把握した上で、原価計算基準上の原則的処理方法か例外的処理方法、もしくは理論的にあるべき製造指図書の直接材料費か製造原価から控除という形にするのが妥当ではないかと思われる。百歩譲れば2種類の商品で共通の直接材料費を使用していて、しかもどちらが原因かわからない…といった場面だが…。適用される「前提条件」としては相当にレアなケースといえるだろう。